IPO事例 オイシックス斉藤氏

MBA取得後のキャリアと成果

会計コンサルタントから転身し、
急成長するベンチャーの株式上場を成功に導いた立役者

斉藤 篤彦さん

オイシックス株式会社 ソリューション事業部 事業部長
斉藤篤彦さん(2011年入学 2014年卒業)
※所属企業、肩書きはインタビュー当時のもの

グロービス経営大学院2011年入学、2014年卒業。立教大学経済学部卒業後、公認会計士二次試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに入所。法定監査、株式公開支援業務を経て、M&Aに関するアドバイザリー業務及びデューデリジェンス業務に従事。その後グロービスで開催されたキャリアセミナーを機にオイシックス株式会社(以下、オイシックス)へ転職。内部監査室長としてオイシックスの東証マザーズへの新規株式上場(IPO)に大きく貢献。経営企画室マネージャーとして、業績管理や予算管理などの業務を担当。現在は、法人向けの新規事業をソリューション事業部で運営。物流ソリューション提供やECコンサルティングサービスの立上げと運営に従事している。

会計コンサルタントからベンチャー企業へ

斉藤 篤彦さん

監査法人は上場企業に対して財務諸表監査を行う一方で、ベンチャー企業など上場前の企業に対して会計視点から上場=IPO(Initial Public offering)を支援する業務もあります。私は最初の5年間、上場企業の監査と合わせて、上場前の企業への財務諸表の作成方法や会計処理、内部管理体制の構築に関してのコンサルティングをし、その後は企業のM&Aに関わる業務を中心に行っていました。具体的にはデューディリジェンスという業務が多いのですが、M&Aの対象となる企業の財務分析や経営陣にインタビューをしながら、投資先企業に内在する投資リスクを抽出、数値化し、それを投資する側の企業に説明するというもの。この業務は通常1ヶ月ほどの短期間で行われるので、買収対象企業のビジネスモデルの要点を素早く正確につかむ必要があります。そのため経営者と直接話をさせていただく機会が多く、もっと経営全般の知識やスキルを磨かなくてはと思ったのがグロービスで学ぼうと考えたきっかけで、得た学びはすぐ活用することができました。

社会人になって7年目の2011年、M&Aの会計コンサルタントとして充実した日々を過ごしていましたが、助言したものを実行するかどうかが最終的にクライアント企業にゆだねられているということに、何かもどかしさを感じていました。また、自分が最初に担当したベンチャー企業の勢いがある雰囲気が好きだったことに気付き始めていました。徐々にコンサルタントとして企業を支援する側から、ベンチャー企業で自らが実行者として企業経営を担う側になりたいと考えるようになっていました。ちょうどその時、タイミング良くグロービスで開催されたキャリアセミナーがあり、オイシックスの高島社長から話を聞く機会がありました。

オイシックスは、2000年6月に「豊かな食生活を、できるだけ多くの人に」という企業理念の元に設立されたベンチャー企業。「作った人が自分の子供に食べさせることのできる食品のみをお届けする」というコンセプトのもと、青果以外にも肉・魚・日配品・惣菜・スイーツなど2000品目以上を取り扱い、主にインターネットを通してお客様にお届けしています。「ベンチャーは大変だけど、やりがいがある。カオスな状態をポジティブに楽しめる人は向いている。」、そう話す高島の姿に引き込まれ、オイシックスのビジネスの内容や会社の雰囲気、企業理念に強く惹かれました。

そのオイシックスが次のステージに進むために株式市場への上場(IPO)の準備をすすめている。企業にとっての大きなチャレンジに、自分も力になりたい、そして自分もチャレンジしたい、そう考えた私は、IPOを成功させるというミッションを胸にオイシックスへ参画しました。

ベンチャー企業のIPO実現のための「支援者」から「実行者」へ

斉藤 篤彦さん

IPOとは自社の株式を証券取引所に新規上場させることですが、企業が株式を公開すると一般的に知名度や信用力が上がって、市場から多額の資金を得やすくなり、事業が一段と飛躍する可能性が高まります。しかしIPOをするためには上場企業として信用されるにふさわしい内部管理体制の構築、内部統制の構築など、経営体質を一段と強化する必要があります。同時にベンチャー企業にとっては、それは経営体制を整える大きな機会でもあるのです。上場の際は証券取引所と証券会社、監査法人が「上場企業の基準を満たしているか」の審査を行いますが、これらの審査項目は数百にも上り、全ての項目で基準を満たす必要があるのです。私はオイシックスで内部監査室長として、このIPOへの経営体制構築に関わる内部監査を一手に引き受ける役割を担いました。

実際にIPOの内部監査業務に携わっていく中で、難しい点は2つありました。それは、「財務面だけでない経営全体の視野を持ちながら正しい解を考えること」そして「実行者として大勢の人をスピード感を持って巻き込まないといけないこと」です。

一つ目の経営全体の視野と正しい解を考える力についてですが、私は前職での経験から財務面において、ベンチャー企業がIPOをする上での困難な点や、上場企業としての大手企業に成長したときの「あるべき姿」は理解していました。そのため、財務的な観点から何をすべきかを考えることはできたと思います。しかしながら、私が担った役割は専門とする財務だけではなく、労務、法務、総務など、今まで自分が経験したことのない領域にも幅広く及んでいました。また、監査基準を満たすためには、今までやってきた業務や仕組みの変更が伴うので、影響するすべての部署に説得して実際に変更してもらう必要がありました。例えば、マーケティング部門で是正が必要なときは変更内容を立案し、説得する側にもマーケティングの知識が必要になってくる。運用を1つ変更すると、別部門と整合が取れているかも考えてなくてはいけない。企業経営における因果の流れがわかっていないと出来ないことが多くありました。その時、役に立ったのはグロービスの学びで得た「経営知識の総合力」と「考える力」でした。経営全体を理解する視野を持ち、そのうえで何が正しいか、どうすべきかを考え抜く力をグロービスで身につけていなかったら、自分の専門領域の財務以外は太刀打ちできなかったと思います。

二つ目の大勢の人をスピード感を持って巻き込まなければならなかった事は、まさにベンチャーでの臨場感を肌で感じた体験でした。前職のような審査側の監査法人では「これが駄目なので是正してください」と簡単に言えるのですが、その会社の現場で何が起きているのか、どう影響するのかなど、細かい状況までは分からないので詳細までは指導できない実情があります。一方で、それらを変えなければならない実行側の立場になると、審査を受けている短い時間で、変えるべきことを考え、関係者に納得できるように説明し、実際に運用するところまで持っていかなければいけないのです。そのためには、対象となる社員に対し、今までの仕事の仕方を否定し、正しい方法に変えてもらわなければならないのです。しかも、その項目は1つではなく時には数百にも及びます。ベンチャーはとにかくスピード感を持って判断し、実行し、売上をあげてなんぼの世界。監査で必要だからと言っても納得してもらえない中で、一度に大勢の人を巻きこんで、短期間で動かさなければなりません。これまでと求められるスタンスが大きく変わったことを改めて強く感じさせられました。

前職でもお客様から信頼される先輩コンサルタントは「クライアントの目線で分かる言葉で丁寧に話すこと」と「出来る限り顔を合わせてコミュニケーション」をとることを心がけていました。「評論家」のように「言って終わり」ではない。そんな姿を間近で見た経験は、オイシックスでのIPOさせるために、大きく役立ったと思います。とにかく、経営全体について考え、相手が納得できる、かつ、運用できるような解を考え、動いてもらうために「謙虚」に「直接コミュニケーション」を取る事を心がけました。

前職の経験にグロービスでの学びを掛け算したこと。このことが、短時間で社内の人間の信頼を得て周囲を巻き込み、IPOを実現させた源だと思います。2013年3月13日に東証マザーズへ上場。証券取引所の鐘を鳴らす場に「実行者」として居合わせることができたのは、生涯忘れられない体験になりました。

グロービスとはプラスのエネルギーがもらえる場所

斉藤 篤彦さん

グロービスを一言で表すと「プラスのエネルギーがもらえる場所」です。それぞれの人生に対して真剣に取り組んでいる仲間が大勢いる。ダメとか、無理とか考えている暇があったら、どうにかして実現する方法を、みんなが考えている。グロービスに来ると元気が出るし、仲間たちを見て「負けられないな」って思います。入学時と比べると、人生そのものへの向き合い方が変わったと感じています。

IPO準備の一時期は、業務管理や予算管理などの通常の業務も同時並行で担当していて、私自身にとっては、大きなチャレンジの時期でした。たぶん3人分ぐらい働いていたのではないかと思います。でも負けなかったのは、仲間たちの存在が大きかったからです。

将来、私は社会にインパクトを与えられるようなベンチャー経営者になりたいと思っています。オイシックスは「豊かな食生活を、できるだけ多くの人に」という企業理念のもと、食を通じて世の中を良くしていっています。自分達の事業を通じて世の中を良くしているという、実感が持てている。その中で利益もちゃんと出している。素晴らしいことだと思います。

何も知らないとベンチャー企業社長って雲の上の存在ですが、グロービスでたくさんの企業事例を通じて社長の立場で意思決定のシミュレーションを繰り返したり、起業して凄い勢いで成長している仲間に身近に触れたりすることで、ベンチャー企業の社長と自分との距離が急激に縮まります。また、成長し成功するまでの道筋のイメージができ、具体的に自分自身に何が足りないかが理解できるようになりました。

日本の社会をより成長させるために、ベンチャーという場を通じてもっと成長して、自分自身が日本をより良くしていくための「担ぎ手」になりたい、そう思っています。

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