取締役事例 サブウェイ庵原氏

MBA取得後のキャリアと成果

マネジメント未経験で「日本サブウェイ取締役」へ抜擢。
現場に寄り添いながら「一番身近なファーストフードブランド」の構築を目指す。

庵原 リサさん

日本サブウェイ株式会社 取締役営業統括本部長
庵原リサさん(2009年入学 2012年卒業)
※所属企業、肩書きはインタビュー当時のもの

大学卒業後、サントリーに入社。酒類ビジネスの営業部門に女性として初めて配属される。その後、新設された「外食」法人対象の部門にて、営業企画、ソリューション営業を経験。2010年にはサントリーのグループ会社である「日本サブウェイ」(以下、「サブウェイ」)へ出向し、取締役 マーケティング本部長に就任。2010年度に238だった店舗数は、2013年には471まで急成長。現在は、営業統括本部長として店舗の運営力・現場力の強化に取り組み、日本市場での事業拡大を推進している。
グロービス経営大学院は2012年に卒業。2013年、企業変革において大きな功績を残した当学卒業生に与えられるグロービス・アルムナイ・アワード変革部門受賞。

商談先の経営課題がつかめないという「大きな壁」が学びのきっかけに

庵原 リサさん

サントリー入社後最初は、女性初の営業社員としてスーパーマーケットや飲食店への営業を行っていました。その頃から「食」に関わる仕事がしたいなと思っていたので、飲食店へ営業に行っている時の方が単純に楽しかったのです。「食」に関わる仕事がしたいと上司には伝えていたこともあり、「外食企業」専門の部門が新規に立ち上がった時には、「ずっと言っていたのだから、頑張ってこい!」と快く異動させて下さいました。

希望の部門への配属でしたが、この異動は私に「大きな壁」を突きつけました。当時法人のソリューション営業の担当として力を入れて取り組んでいた、ある新規外食企業との商談。その外食企業をずっと追いかけていて、ようやく提案の機会がもらえたのに、負けてしまったのです。

かなり悔しくて、ショックを受け、どこに原因があったのかと、じっくり振り返ってみました。そこでわかったのが、顧客が望むような課題解決策を考えられていなかったということでした。商談相手の方は経営陣だったのですが、打ち合わせをしていると経営課題や財務戦略についての話題がたびたび出てきていました。しかし、私はそれをきちんと理解できなかった。その企業がどこに向かおうとしているのかがつかめず、先方の本当のニーズがどこにあるのかよくわかっていなかったのです。「このままではまずい」という大きな危機感が、大学院進学への1歩を踏み出すきっかけになったのです。

その後グロービスでの学びは、すぐに業務でも成果として出てきました。以前失敗した新規外食企業と改めて商談に臨んだ時、顧客が抱える経営課題をレポートにまとめて提案しました。このレポートは、全国の営業マンの協力を得て店舗ごとに作成したもの。このレポートと熱意が評価され、新たな契約に繋がったのです。

念願の「食」の仕事と、「取締役」という大きな戸惑い

今考えると、「食」に関わる仕事をしたいという想いは、祖母が経営していた料理旅館で幼少期からお手伝いをしていたことが原体験だったと思います。私自身の根っこのところでサービスも好きでしたし、食べ物も好きでした。「外食企業」対象の営業として「外食」に関わる仕事に携わっていたものの、外から関わるのは物足りないと感じていました。内側から関わる仕事をしたい、自ら「食」に関わるサービスを提供したいと考え、社内では伝え続けるようにしていたところ、サントリーのグループ会社である「サブウェイ」へ出向することになりました。もともと「日本サブウェイ」の代表である伊藤の経営者としての考え方に共感していましたし、「食」なら酒類以外の業界がいいと考えていたので、素敵なご縁だと思いました。

ただ念願の「サブウェイ」への出向当時の肩書は、「取締役 マーケティング本部長」。この時、大きな戸惑いがあったことを今でも鮮明に覚えています。戸惑いは3つの「違い」が原因でした。1つ目は元々所属していたサントリーというメーカーと、外食産業との儲けの構造・ビジネスモデルの違い。2つ目は「企業のステージ」です。「サブウェイ」は小さな会社が大きくなっていく途中の「成長ステージ」。大手企業であった「サントリー」とは、企業の成長ステージが異なり、直面している経営課題が全く違います。3つ目は取締役という肩書です。「サントリー」では平社員でしたので中間管理職を飛ばし、いっきに取締役になってしまいました。周囲からの見られ方や仕事の仕方も違います。自分が営業担当だったら、営業だけやっていればいい、マーケティング担当だったら、マーケティングだけやっていればいい、ということではなくなりました。当たり前のことだったのですが、プレイヤーとしての仕事と役員としての仕事は、全然違います。この3つの違いについて、何が違うのか気付くことと、自分がどう立ち振る舞えばいいか理解することに、時間が掛かりましたし、今もまだ奮闘をしている最中です。

「KPIプロジェクト」で気付いた「現場に寄り添う」ことの大切さ

庵原 リサさん

KPI(Key Performance Indicators)とは、企業目標や戦略の実現にむけて業務プロセスをモニタリングするために設定された重要な指標のことですが、赴任した当時、「サブウェイ」の社内では、このKPIがばらばらで、どのKPIを追うべきなのか曖昧でした。例えば「お客様の数」と言った時にも、「お客様の来店数を追うべき」という人もいれば、「サンドイッチの数を追うべき」という声もある。1つの事象に対して切り口が多くあり、店舗や人によって追う数字がマチマチという状態でした。店舗数の急拡大で立地も広がっていて、かかわるフランチャイズ・オーナーも増えてきている中、“共通言語”を作らないと進む方向がバラバラになってしまう。早急に追うべきKPIを整えて、それを誰でも素早く簡単に見られるようなシステムを作る必要があると判断しました。現場で起きていること定量的に把握するという根本的な部分を整えないと、いくらマーケティング戦略を作っても、絵に描いた餅となり実現性の低いものになってしまいます。この問題を解消するために立ち上げたのが「KPIプロジェクト」です。

この時一番力を注いだことは、社内において誰を巻き込んで、どういうプロセスでプロジェクトを進めていくのかという「最初のマップ(地図)」を描くことでした。この点は相当知恵を絞りました。例えば、KPI設定のための戦略マップを策定する時は、マーケティング部だけで考えず、フランチャイズの店長の方やオーナーの方、当社の営業担当にも集まってもらい策定するなど、実際に使うみんなが納得してもらえる結果になるように努めながら、KPIを設定しました。

営業統括の立場になった現在は、いかにKPIを自分事として追いかけやすくするか、成果に対する確度が高いものにするかの改善をしています。例えば、スーパーバイザーの会議や成功事例の共有化など、これまで実施していなかった取組みをはじめています。最近「ビッグデータ」という言葉をよく聞きますが、実は正しく数字を使える人はとても少ないと思います。サブウェイもまだ同じ状態だと考えていて、私自身でさえKPIを設定したものの自分の中でまだ完全に腹落ちできておらず、筋肉になっていない状態です。まずは私自身がKPIを使いこなせるようになって、それをちゃんと伝播できるようにする必要があると考えています。

私の業務領域が「マーケティング担当」から「営業統括担当」に変わったことは、幸運だったと思います。私自身が作ったものを自ら運用する側に回る。自分が設定したKPIの抜け漏れや達成するためには現場で何を動かさなくてはいけないのか、というものが見えてくる。現場に行くことでいろいろなものが連鎖しているのが理解できるのです。マーケティングと営業統括の両方を経験したことにより、「現場に寄り添う」ことの大切さを改めて実感しています。

親会社からきた取締役という逆境は「心の勝負」

私は「サントリー」という親会社から出向でやってきた取締役です。正直、社員の皆さんはやりづらさがあったと思います。「サブウェイ」に勤務されている方々は、外食のプロフェッショナルですし、サブウェイそのもののプロフェッショナルです。プロパーとして20年勤務されている方もいらっしゃいます。そこに、外食も知らず、女性で、相対的に若い私がいきなり外から入ってくる。理屈では理解できても、感情的に理解しづらいのは仕方がないことだと思います。

サントリーにいた時は、「庵原さんはこういう成果を出してきた人」っていうのを職場の仲間は分かった上で接してくれましたので、私の「言葉」は伝わりやすかったと思います。それが当たり前ではない、過去に私が何やってきたかは関係ない中で成果を上げていくことは、私にとって大きなハードルであり「心の勝負」と呼べるものでした。
このハードルを乗り越えるためには、まずは私と共感してくれる方を一人、二人と徐々に増やしていかなければいけないと考えました。そのために、「聴く」こと、「話す」ことに時間をかけるようにしています。社員の方が何を考えているのか、しっかりと「聴く」。その上で「私がどうしたいのか」を話して、伝えることを意識しています。最初は私自身に自信がなくて、全然自分の言葉になっていないような気がしていました。でもこの「聴く」と「話す」の機会をとにかく多く作ることで、私の考えの良いところも悪いところも理解して下さる方が、少しずつですが増えているのではないかと感じています。

パワーポイントに戦略を落としていくことは、自分個人で完結できてしまう側面が強いので比較的安定してアウトプットできていると思います。でも、そうではない「心の勝負」は、難しさもありますし、時間も掛かり、すごく大切なことだということを痛感しました。しかし、この「心の勝負」の支えになっていたのもまた、「組織行動とリーダーシップ」という科目でのグロービスでの学びだったのです。

グロービスはビジネス人生における大切なパートナー

庵原 リサさん

グロービスでの学びは、本当に全部が役に立ったと思っています。何故かと言うと、役員の立場は、経営に関する知識を一通り理解していないと、今何についての話がされているのか、目の前で何が起こっているのか分かりません。例えば「組織を新しく作ることは、それがメンバーにどれだけ強烈なメッセージになるか」、「マーケティング戦略策定のためには、ターゲットを整理しなくてはいけない」―このようなことも、サントリーで営業だけをやっているだけでは知らないままだったと思います。基本的に押さえなければならない経営のツボを理解できたことは、大きな武器となりました。

そして、ケースを通し、多くの「疑似体験」を積んでいたことも、実務を行う上では大変役に立ちました。何も知らなければ、何か事象が起きた時に、「自分が悪いから」、「自分だけではないのか」と悩んで落ち込んでいたと思います。でも、例えば「今は成長ステージだから、こういうことって起きうるよね」って知っていたので、準備することができました。これらのことは、グロービスで学ばなかったら、分からなかったことです。ケースでの「疑似体験」には絶対的な解答がある訳ではないのですが、「こういう事象がある」「その時にはどう考えればよいか」ということを知っているか、知らないかは大きな違いでした。

また、学び以外でもグロービスで大切なものを得たと思います。それは「仲間」の存在です。実は、先に上げた「KPIプロジェクト」を実現させる上で外部コンサルタントとして、グロービスで得た仲間の力を借りました。自分の考えに対して、「要するに庵原さんがやりたいことは・・・」など、視野狭窄になっていないか多面的にアドバイスをしてくれましたし、私の考えを結晶化する上でのディスカッションパートナーにもなってくれました。「グロービスで学んだ」という同じ土台を持っている「仲間」は、凄く大切な存在だったと思います。

この「仲間」の存在は、他の点でも役立っています。私は卒業後も、「クリティカル・シンキング」の授業を一緒に受講したメンバーと、定期的に「輪読会」を行っています。最近なかなか参加できていないのですが、様々な情報交換の場でもあり、日々の業務に集中する中で、狭まってきた視野をリセットしてくれる時間となっています。

「輪読会」以外にも、「G1経営者会議」や「あすか会議」などに参加することも、自分の視野を広げる機会になっています。グロービスに通学していた時は、「私はこうあるべきだ」と考えて、日々の業務の中でも、視座を上げたり、多面的に考えたりと目線をキープすることが出来ていたのですが、卒業するとそれが出来なくなっていることに気がつきました。視野が狭くなり、いつの間にか自分の業界のことしか考えられなくなっている。グロービスの仲間にお会いすることや「あすか会議」に参加することは、私自身の視野をリセットさせもう一度広い視野でも物事を多面的に見せる効果があり、今では貴重な機会となっています。

私にとって、グロービスは卒業したから関係が終わるということではなく、これから先も大切なパートナーだと言えます。私自身も、今でもグロービスに多くの成長の機会を頂いていますし、私が何かお手伝いできることがあれば、出来るかぎり協力したいと思っています。そのようなお互い貢献し合えるようなパートナーシップを築きあげていきたいと考えています。

そしてグロービスでの学びを通じて私が抱いた大きな「志」は、「サブウェイ」をお客さまにとって、一番身近なファーストフードブランドにしていくことです。店舗数を増やすことにより、誰にとっても身近な食のソリューションの場にしていきたいと考えています。ただその過程において、私は今一緒に働いているチームの為に、メンバーの為に働いていきたいと考えています。私の下で、一生懸命働いてくれているメンバーがサブウェイを支えてくれています。メンバーのみんなの市場価値があがり、「サブウェイで仕事していてよかった。この会社に勤めていてよかった」、って思ってもらえるようにすることが、大事なことだと思っています。私自身が、「何のために働いているのか」といろいろと考えて出てきた結論がこれです。長期的な「一番身近なファーストフードブランド」を作るという「志」とともに、その過程の中ではメンバーにどれだけ貢献できているか、サブウェイに関わって下さる方々にどれだけ貢献できているのか、という点を大切に生きていきたいと考えています。

取締役事例 日本サブウェイ庵原氏 のページ。グロービス経営大学院は東京・大阪・名古屋・仙台・福岡・オンラインで、「ビジネス・リーダー」を育成するための実践的なMBA(経営学修士)プログラムを提供する専門職大学院です。