教員からのアドバイス(安永雄彦)

安永雄彦

教員 安永雄彦からのアドバイス

教員 安永雄彦からのアドバイス

安永 雄彦Yasunaga Yuhiko

※プロフィールはページ末尾に記載

グロービスでは、ヒト系・志系科目の教員を担当。自身で経営される経営人材のサーチ・コンサルティング事業から見える風景を交えながら、私たちを取り巻く環境がどのように変化し、その中で経営人材にどのような能力が求められているのか、話を聞いた。

キャリアというテーマを考える必要性が高まっているのは、なぜでしょうか?

会社任せだったキャリアや能力開発は「自己責任」になった。

これまでは、特に日本の大手企業を中心に「新入社員を採用し、ジョブ・ローテーション制度で数年ごとに様々な役割を与えることで経営人材を育成する」という終身雇用を前提としたキャリアが、会社によって準備されていました。海外の企業でも1970年代頃までは、そのように終身雇用を前提においたキャリアのルートが一般的でした。しかし、1980年代頃からは職務・職位などのポストに対して報酬を支払う「職務主義」に移行しています。その結果、これまでのように社内で人材を育てることに加え、職務を担える能力を満たす人材を社外からも受け入れるようになりました。まさに今、グローバル展開している企業を中心に、日本企業もグローバルスタンダードである「職務主義」を採用し始めています。

それが個人のキャリアにとって、どのような意味合いを持つのか。端的に申し上げると、キャリアや能力開発が「自己責任」になるということです。これまでは会社から能力開発の機会が提供され、終身雇用を前提に会社任せのキャリアを歩むことができました。これからは自分のキャリアは自分で考え、その実現に必要な能力も自己責任で開発していかなければなりません。

キャリアや能力開発は「自己責任」というお話でしたが、そのような時代に「ビジネス・リーダー」にはどのような能力が求められているのでしょうか?

「グローバルな経験」と「経営の専門能力を含むリーダーシップ」が求められている。

教員 安永雄彦からのアドバイス

私は現在エグゼクティブ・サーチの仕事をしています。具体的には、クライアント企業の経営課題をヒアリングし、それを解決するための経営人材を紹介しています。以前はクライアントの大半を外資系企業が占めていましたが、現在は国内企業が7割を占めています。そのような事実からも、先ほどお伝えした「職務主義」への急激な移行と、経営人材へのニーズが高まっていることを実感しています。そのようなサービスを提供する中で、広く経営人材に求められる能力は大きく2つあると考えています。

1つ目は、グローバルな経験です。例えば人事系のエグゼクティブを想定した場合、日本法人だけではなく、海外現地法人も横断した人事制度設計・導入の経験は重宝されます。法務や会計などの専門分野でも同様です。2つ目は、経営の専門能力を含むリーダーシップです。リーダーシップという言葉の定義は様々ですが、ここでは「自分の思想のもと、経営の仕組みを考え推進していく能力」とします。自分なりの思想は、その人の個性や哲学に影響されます。グロービスのMBAでは体系的な経営専門能力を身につけることに加え、志を磨くことを重要視しています。例えば、私も教えている志系科目の「リーダーシップ開発と倫理・価値観」では、360度調査(上司、同僚、部下からの客観的評価)などを活用しながら自分の個性・能力を理解すると共に、あるべきリーダー像とのギャップを認識し自己開発の方向性を考えます。また同じく志系の科目「企業家リーダーシップ」では、冒険家や起業家など様々な分野で活躍するリーダーシップを感じ取ることで自らの哲学を深めていき、最後のクラスでは「自分の任務」を宣言します。そのように志を明確にしていく先に、リーダーとしての自分の思想を持つことができるようになります。そして、実際に経営の仕組みを考え推進していく際には、考える力とコミュニケーション力が求められます。「クリティカル・シンキング」に代表される思考系科目では、周囲を巻き込みながら事を成し遂げていく実践力を養います。

そのような経営人材へのニーズが背景にあり、MBAを学んだ方の市場価値は確実に上がってきていると感じています。ただ、学歴や学位に価値があるわけではありません。実践的な能力を身につけ実績を積んでいることが、市場からの評価につながります。その観点を踏まえると、グロービスが大切にしている実践的なマネジメント教育が極めて有効だと考えます。特にアカデミックな教授ではなく、実体験から経営を肌感覚で理解している実務家教員が教壇に立っていることが重要だと考えています。知識やHow toを伝えているわけではなく、実際に実践してみて上手くいったこと、いかなかったことも含めてクラスで教えています。ちなみに人材マーケットで評価される実績とは、成功のことでもあり失敗のことでもあります。学生の皆さんにも、グロービスで実践的な能力を身につけ、成功・失敗問わず場数を踏んで欲しいと思っています。

どのような人がグロービスのMBAを学び、キャリアにどう役立てているのでしょうか?

経営ポジションの方もそうでない方も、今の立場に必要なものを得ています。

教員 安永雄彦からのアドバイス

グロービスには様々なバックグラウンドの学生が通っています。これから「ビジネス・リーダー」としてキャリアを築いていこうという方もいれば、既に経営に携わるポジションにいる経験豊富な方もいらっしゃいます。それぞれの立場で、グロービスのMBAを役立てています。

これから「ビジネス・リーダー」を目指す方には、会社任せではなく、自分で自分のキャリアを考えることが求められます。自分が何をしたいのかを考えるためには、世の中の選択肢と自分自身の問題意識に気付く必要があります。

MBAで経営を体系的に学ぶことは、会社全体の仕組みを理解することだとも言えます。自分が経験できる範囲とは比べ物にならないほど、広い経営の疑似体験ができます。疑似体験を通じて選択肢を知り、それについて考えることや興味を持つことを通じて問題意識に気付けます。そして、もう一つ重要なのは多様な人と交流し世界を広げる機会があることです。グロービスには皆さんと同じように「ビジネス・リーダー」を目指す方が集まっています。仕事やキャリア形成にダイレクトに生きる人脈を形成することもできますし、様々な観点におけるモノの見方を養うこともできます。このようにクラスでの学びや人とのコミュニケーションを通じて体験の種類を増やし、自分自身の成長の余地を拡大していくことができます。

そして経験豊富な方、例えば大阪・名古屋・福岡などに経営者やこれから経営を継ぐ事業承継の立場にある学生が多くいますが、まさに明日の仕事にMBAの学びをそのまま活かせる環境にいる方々です。そのような立場にある方がMBAを学ぶ一番のメリットは、経営には思想がある、経営の筋道があると知ることで、試してみたいと考え、即座に実践していけることだと思います。独学で、MBAレベルの学びを得ることは難しいと考えています。なぜなら、人間の認識能力は限られているからです。例えば本を読むにしても、自分の嗜好にあうジャンルの本ばかりを選んでしまったり、そうでなかったとしても、本に書かれていることの中から自分が欲しい情報(アンテナに引っかかった情報)を選び取ってしまうのが現実です。また外部コンサルタントから提案を受けることもできますが、自分自身が経営について理解していないと、提案された形だけの施策を導入してしまいます。その場合、本当に重要な背景や思想などへの理解に乏しく、実行・運用の段階になって失敗をしてしまうケースが散見されます。グロービスのMBAでは、多くのエクセレントカンパニーの事例を学び、それを自分自身の経験値にすることができます。もちろんそれだけで成功は保証されませんが、大きな失敗を避けることができます。仮に失敗をしてもその要因を分析し、次の行動・意思決定に生かせるようになります。致命的な失敗にならない範囲で、やってみて試す。その繰り返しが組織を強くし、成長させていくのです。

学生にどんなキャリアを歩んで欲しいと思いますか?

人生観や価値観を意識し、自分の生き方をマネジメントできるようになって欲しい。

人間が生まれてから死ぬまでの時間というのは、意識してみると決して長くはないのです。だからこそ、自分の人生観や価値観というものをしっかりと意識しながらキャリアを歩んでいって欲しいと思っています。グロービスが提供しているように、志を育て、それを振り返る機会を持つことは、人生観や価値観を明確にするために極めて重要です。それによって人生の方向性が明確になり、選択肢が生まれます。ジョブチェンジしてもいいし、起業してゼロから自分でやりたいことを実現してもいい。また経営は、自分の生き方をマネジメントすることにも繋がります。自分自身をマネジメントできるからこそ、組織を、そして社会をマネジメントできると言えます。グロービスのMBAで学ばれる皆さんには、経営を学ぶことを通して、自分自身の生き方も学んでいって欲しいと思います。そのような想いも込めて、私はクラスの最後に、自分なりの人生訓をお伝えするようにしています。キャリアを真剣に考える皆さんへ、自分の生き方を見つけるヒントを提供することを意識しながらいつも教壇に立っています。

安永雄彦プロフィール

株式会社島本パートナーズ 代表取締役社長。慶應義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院経営学研究科博士課程修了。三和銀行に21年間勤務し、大阪、ロンドン、東京、名古屋の各地で現場の法人営業から、本社での経営企画管理や、人事評価企画・研修から、国際業務戦略の立案にいたるまで幅広く担当する。 また、大手鉄道会社において、新規事業の企画開発に従事する一方、人材コンサルタントへの転職前は、ITを活用した消費者金融会社(モビット)の設立、開業を財務・人事管理部門ヘッドとして担当する。現在は、外資系大手エグゼクティブ・サーチ会社(ラッセル・レイノルズ社)を経て独立し、(株)島本パートナーズの代表取締役社長として経営幹部人材のサーチ・コンサルティング業務に従事するとともに、ベンチャー企業経営者や大手企業幹部向けの経営者向けコーチング活動を展開中。(株)フルキャストホールディングス社外取締役。国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ資格(CPCC) 取得。浄土真宗本願寺派常務委員。早稲田大学商学部元教員。事業再生実務家協会会員。経済同友会会員。元内閣府地域力再生機構研究会委員。著書に「日本型プロフェッショナルの条件」(ダイヤモンド社)。

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