教員からのアドバイス(西口敦)

西口敦

教員 西口敦からのアドバイス

教員 西口敦からのアドバイス

西口 敦Nishiguchi Atsushi

※プロフィールはページ末尾に記載

グロービスでは、思考系、戦略・マーケティング系科目の教員を担当。戦略コンサルティングファーム、多様な組織における経営ポジションなど豊富な経験を踏まえ、これからの「ビジネス・リーダー」や、今まさに経営を実践している人に必要な能力について、話を聞いた。

キャリアというテーマを考える必要性が高まっているのは、なぜでしょうか?

労働寿命が企業寿命を超えた。キャリアの方向性を考えるタイミングが必ず来る。

随分前にドラッカーが書いていた話ですが、働く人の労働寿命が延びて、企業の栄枯盛衰の寿命を超えてしまっているんですよね。要するに働く人は40年、50年と働いていられますが、その期間ずっとピークを維持したままで存在し続けられる企業なんて存在しないという問題です。たとえ新卒で素晴らしい会社に入社したとしても、キャリアのどこかのタイミングで自分の方向性を変えなければならない局面があり、変えられるように備えておかなければならない。これからは間違いなく、終身雇用でいつまでも安定というわけにはいかないので、先のキャリアについて常に考えておかないとリスクが大きすぎるということだと思います。

さらにこの国の人口動態から考えても、若い人の労働力供給は先細る一方なので、働ける人が長く働かないと国がもたないわけです。定年も延びていきます。ある意味、今の30代くらいの皆さんは、雇用が無くなる心配はあまりないのかもしれません。なにかしらの仕事はあります。ただその中で、楽しく働ける仕事、世の中に役に立っていると実感できる仕事、かつ自分が付加価値を出せる仕事をやろうと思ったら、自分の力を付けていく必要がより一層高まっていくと思います。自分なりの楽しさを感じ、社会の役に立つためには、武器が必要だということです。

そのような変化を見据え、これからの「ビジネス・リーダー」はどのような武器を持っておく必要があるのでしょうか?

重要な情報を見極め、使える情報に組み立てる「考える力」が求められる。

とてもベーシックなものですが、自分の頭で考える力、「クリティカル・シンキング」の力は絶対に必要です。今の世の中には、いくらでも情報があるように見えます。ただそれらの情報から、なにが重要な情報なのか見極める、使える情報に解釈し組み立てる、必要な情報を取りに行くなどの重要なアクションは、考える力がなくてはできません。たとえば、パッと見ると、二律背反の情報が世の中にはたくさん落ちています。そのどちらが正しいのか、それはなぜなのかを考えて見極めていく力が「ビジネス・リーダー」には求められます。自分のキャリアを考えるときも同様です。周りの人は自分の経験に基づいて意見を言いますが、その中でどれが参考になるのか、自分に当てはめるとどうなのか、これらを判断するために必要となるのは、まさに考える力です。

ベースを支える「考える力」に加え、さらに必要となる武器はありますか?

ビジネスの根本である顧客志向。顧客の基準に合わせて思考、行動ができる力。

教員 西口敦からのアドバイス

戦略・マーケティング、カネ、ヒトの動かし方。いずれも、社会人・「ビジネス・リーダー」として世の中を渡っていくために必要なスキルセットです。そしてグロービスのMBAで提供している科目で網羅されているものです。おそらく、社会で仕事をするなかで何かの問題にぶち当たったとき、どの科目のどのテーマでも全くカバーできない、全く知らないというテーマはそうそうないと思います。これは、あの科目のあの回で学んだことの応用編だなということがわかるでしょう。このグロービスのMBAで学べることは、仕事・職種を問わないし、対象となる組織がNPOであろうが自治体であろうが、活かせるものだと思います。

こうした知識やスキルセットは、正しい方向に用いてこそ意味があります。正しい方向とは、あえて表現するならば「顧客志向」、つまり顧客の基準に合わせて思考、行動ができるということなのかもしれません。誰の役に立っているのだろう、誰にどんな価値を提供しているのだろうという根本的なことを理解し考えることで、スキルや知識を正しく活かせるようになります。

能力開発という観点以外に、グロービスのMBAはどうキャリアに役立つのでしょうか?

リスク許容度が上がり、試行回数が増え、やりたいことが見つかる可能性が高まる。

やってみることなく、やりたいことが見つかるのは、実は極めて稀でラッキーなことです。従って、論理的には、やりたいことを見つけるためには試行回数を増やさなければなりません。何回もやってみて、これは向いている、これは向いていないというのを体感していくことです。そのためには、何かしらのリスクを背負う必要があります。MBAを学ぶことは、そのリスクをテイクできるだけの自分の深みと幅を持つことにつながります。何かを失敗しても、自分の力でリカバリーできるとか、その他の環境でもなんとでもできるとか。つまり、キャリアに対するリスク許容度が上がり、試行回数が増え、やりたいことが見つかる可能性が高まるという話です。また、ダイバーシティへの適用度も高まります。性別や年齢、業界などが異なる多様な環境で学ぶなかで、多様な人がいて、多様な考え方があることに気付きます。どのような環境でも、「こういう考え方もあるよね」と許容範囲が広がります。これもまた、新しい取り組みを試行するハードルを下げることにつながります。

またグロービスという場についてお話をすると、クラス以外にも飲み会・懇親会などが多いのですが、そこでも結構真面目な話を延々としています。仕事の話、会社の話、キャリアの話。そういう自分の体験の外にある情報に触れる場が圧倒的に増えるので、知らないものを知る機会も増え、食わず嫌いもなくなります。全く自分とは縁遠いと思っていた会社・職業も、人の顔が見えることでリアリティが出て興味が湧いてきます。そういう点でも、グロービスという場がもたらす価値はものすごく大きいと思っています。

そのようなグロービスの場には、どのような方が多いのでしょうか?

きっかけは不足感。重要なのは問題意識と意欲、そして楽しさ。

なにかしらの不足感を持っている方が多いですよね。不足感には「学ぶ機会が足りない」「武器が足りない」の2通りがあります。前者は、実務でマネジメントのことを学べる場がないということです。目先の数字に追われながら、そこでは成果を出し評価をされてきた。でもこのままではマネジメントを担う目線やスキルが得られず、そのイメージをなかなか持てない。例えば製薬業界でMRとして活躍されている方であっても、大企業の組織で限定的な役割のみを担っている場合は、この不足感をお持ちの方が多いかもしれません。一方で、ベンチャー系の比較的規模が小さめの会社で、仕事ができ、ぽーんと1階層、2階層上のポジションに突然就くことになった方が、後者のイメージです。規模の小さな会社では、どのような種類の仕事にも対応する必要があることや、戦略に立ち戻って考える機会が多いことからMBAの学びを活かす機会が豊富にあります。また裁量の範囲が大きく、自分が変えられる可塑性も大きいです。変えようと思えば、人も変えられるし、お金も調達できるし、新しいことを始めることも、現状を立て直すこともできます。

とはいえ、自分が「学びたい!」と思えるときに学ぶことも極めて重要だと思います。なぜなら、意欲に勝てるものはないからです。もしまだ自分には早いと思うのであれば、学びたくない気持ちが勝っている可能性があるので、今はそのときではないのかもしれません。より多くの学びをものにする上では、問題意識と意欲こそが何よりも重要だと考えています。人は学びたいと思わないと学べない、そして学ぶことが楽しいと思えば勝手に学び始めます。そのため、私は教員としてどの科目を教えるときでも「こうやって考えて、こんな視点を持てれば面白いでしょ」という面白さを大切にしていて、「面白いですね、楽しいですね」というリアクションや感想を学生からもらえるのは嬉しいし、そうなるように心掛けています。

西口教員のように既に経営を実践している方にとって、グロービスのMBAはどう役立つとお考えでしょうか?

自分の体験はあくまで「1」。短期間で「100」も体験を積めるのがビジネススクール。

教員 西口敦からのアドバイス

実務は何かしらに追い込まれてやっているがゆえに、我流やその場しのぎになっていることが大いにありますよね。経験が体系立てて繋がっていくとか、何気なくやっていたことが正しかったんだと自信を持つことは、極めて重要なことだと思います。またその逆に、ビジネススクールでは、上手くいかなかったことに対して次はどうすればいいのかを考えるために有益な「世の中にあるヒント」が得られます。ある程度マネジメントを実践している人の方が、得られる学びは深くなるのではないでしょうか。仕事上の体験は、基本的に今向き合っている課題でしか積めません。グロービスでは、いくつもの疑似体験を短期間で積むことができ、体験数のレバレッジを効かすことができます。経営者であろうが経営企画であろうが、自分の体験はあくまで1でしかありません。短期間で10も20も100も体験を積めることは、大きなメリットになります。かつその体験は、提供する側によって体系立てられ意図も筋道もあるものなので、自分で情報を拾い読みしたり人から話を聞くよりも、効果的・効率的に学びを得ることができると思います。

最後に教員の立場から、皆さんにはどのようなキャリアを歩んで欲しいと思いますか?

リスクテイクして行動し、キャリアの選択肢を広げる。それが結果的に幸福感につながる。

適切にリスクテイクするだけの能力や気構えを得て、実際にそれを行使して欲しいです。リスクを避けようと思って現状に留まっていること、実はそれ自体がリスクかもしれないし、リスクだと思って何かをやってみることが実はリスクヘッジになっているかもしれない。だからこそ、自分のキャリア上のリスクを正しくアセスメント(評価)し、その上で取るべきリスクを正しく取ることを、ぜひやってもらいたいです。それは転職することを煽るのではありません。例えば、今の組織でリスクがあると思って諦めていたこと、あまり考えずに放置していたこともあるかと思います。案外、世の中の会社も組織も人も、簡単に動くところがあったりするので、リスクを取ってそれを動かしていくチャレンジをしてください。もちろん、上手くいかないこともあると思いますが、やることで仮説検証はできるので、結果的に自分の可能性が広がると思います。

少し大上段の話になりますが、人間の幸福感、つまり人が幸せに感じるかどうかは、いろんなオプションがどれくらいあるかによると思っています。例えば、ずっと牢獄の中にしかいられないとすると全然幸せを感じないわけですが、色々なオプションがある、今はこの狭い部屋にいるけど出ようと思えばいつでも出られるとなると、幸せの感覚はより高まります。つまりリスクを取ろうと思えば取れる、取ったこともある、それによって自分が取れるオプションが広いということが実感値として持てれば、実は幸せを感じて生きられると思うのです。表現は難しいのですが、幸せになりたかったら選択肢をもっともっと増やす。そのために、グロービスのような場所で時間を過ごすという選択はありではないかと思いますよ。

西口敦プロフィール

東京大学法学部卒業。ケロッグ経営大学院EDP修了。長銀にて与受信、自治省出向、流動化等に従事。その後、A.T.カーニー、BCGにて金融をはじめ様々な業種・テーマについてのコンサルティングに携わる。アメリカン・エキスプレス提携事業部ディレクター、UBS、結婚情報仲介最大手のオーネットのマーケ・広報、経営企画の責任者を務める。現在、株式会社西口敦事務所の代表取締役社長。

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